院長のコラム

ほろ苦い桜

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世界は混沌としている。米中首脳会談中のシリアへの空爆。表面上の理由は、アサド政権が化学兵器を使用したことに対する制裁となっているが、誰もそれを信じていない。アメリカの外交政策が従来と変わりつつある、それにともなって地域紛争の構図が変わるかもしれない、世界中の人々が憂慮している。朝鮮半島情勢も緊迫化している。国内における連日の報道はもとより、地政学リスクを含んだ日本の株価は欧米と較べてジリジリと下げ円高基調にある。こんなきな臭い状況にも関わらず、夜のNHKのトップニュースは浅田真央選手だった。彼女の功績は誰もが認めるところだが、一触即発の状況下で、国営放送のトップニュースがトップアスリートの引退会見とは、違和感を覚えたのは僕だけだろうか。

クリニックを取り巻く状況が今年は例年と全く異なる。十年も開業すればデータの蓄積が出来ている。不遜と思われるかもしれないが、年初にその年の傾向は大体解る。今年は例年になく患者数、検査件数が少ない。一月、二月は、「こういう年もあるだろう。」程度に思っていたが、三月、四月になっても一向に状況が変わらない。月によって多少の増減はあるが、四ヶ月も連続することは初めてである。さすがに不安になって血液検査会社に問い合わせたところ、やはり対前年度で見て結構落ち込んでいるとの返答だった。奇しくも、例年ならとっくに葉桜になっている当院の桜は、今週満開を迎えた。十年間で最も遅い花見となった。

混迷を極める世界情勢と季節外れの満開の桜、それに、近年稀にない当院の検査件数の少なさを結び合わせることに無理があることは承知している。何かが違う、雰囲気が違うと感じたことはこれが二度目である。初めて感じたのは東日本大震災以降であった。開業して右肩上がりだった検査件数が突如として減少した。しばらく検査数が減るのは当然のことだが、東日本から遠く離れたこの地で、回復基調に至るのに二年を要した。現時点でまだカタストロフィは起こっていない。僕の感覚が何かの予兆でないことを祈るばかりである。

とは言え、先ずは脚下照顧である。自分の足元を見て、自身を反省しなければならない。十年で得た経験と知識が自尊心に繋がっているのかもしれない。それが患者離れを引き起こしている可能性は否定できない。他人に対して慇懃無礼になっていないか、傲岸不遜な態度をとっていないか、厚顔無恥な行動をしていないか、我田引水の言動はしていないか、改めて自分自身を問い直す機会でもある。これは、スタッフにも言えることである。慢心や奢りを抱いていないか、事務的な対応になっていないか、利己的な考えになっていないか、無機質な笑顔を見せていないか。桜が舞い散る季節は、別れや出会いの時である。それはすなわち、旅立ちの瞬間でもある。新たなスタートラインに立った我々には、今年の桜はほろ苦いものになった。夏日の桜吹雪は、僕達に何を語りかけているのだろう。

 

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