院長のコラム

エア・ハエレ・イア・オエ?

あなたは何処へ行くの?

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「エア・ハエレ・イア・オエ?(あなたは何処へ行くの?)」は、ポール・ゴーギャンが第1次タヒチ滞在期に制作した、タヒチ時代の典型的な作品の作品名である。

先週、僕は立て続けにお通夜に行くことになった。何れも、中学時代の友人の父親が亡くなったのである。もちろん、二人とも僕の父親と同世代の人で、現役ばりばりの頃を知っていた。亡くなったとの知らせを受け、直ぐさまそれぞれの自宅に友人と駆けつけた。そこに横たわっている亡骸は、当時の面影は微塵もなかった。痩せ細ったその身体を見て、僕の親父のことを思い出した。見ず知らずの流されて行き着いた土地で一世を風靡して、医師会長にまでなった人が、亡くなれば何の威光もない、そこに神はたたずんでくれていなかった。生きることの無情と無常を嫌が応にも知らされた。

僕は、父親の通夜で遺族代表として話すことになった。動揺動転していて何を話していいか分からなかった。しかし、何かを話さなければならない。父親の亡骸を近くにして、ひたすらワープロに向かって文字を打った。詳細は憶えていないが、参列していただい方に伝えたいことが二つあった。ひたすら心の赴くまま、キーボードを叩き付けた。
一つは、親父は武士(もののふ)だったこと。宮本武蔵、良寛、開高健をこよなく愛した人であった。とても冷静な現実主義者であった。そして母を限りなく愛した人であった。自分の中の揺るぎない精神を全うし、自分の哲学に生きた人であった。武士のように潔い人であった。酒を飲めば会話が弾んだ。それをとにかく伝えたかった。
もう一つ伝えたかったことは、今生の別れではあるけれども、先に旅立った母とようやく会える日が来たのだ。我々遺族にとっては、悲しく寂しく辛い別れだけれども、いよいよ母と永遠に過ごせる日が来たのだ。この通夜の片隅で、母はきっと待ってくれていることでしょう。サヨナライツカ、さようならをしてようやく出会えることが出来るのだ。
通夜の場で、自分の気持ちに任せて書いた文章を読んでいると、とめどなく涙があふれてきた。言葉が出ない、胸が締め付けられ苦しくなった。これを多分嗚咽というのだろう、誰彼構わず泣いた、ひたすら泣いた。真冬のそぼ降るみぞれ雨の中で絶叫した。自分の魂がむき出しになったことだけは鮮明に憶えている。その夜たくさんの方々達から励ましの言葉をいただき救われた。何が起こっているか分からない子供達は、「パパ泣いているわ、なんで泣いているの。」と無邪気な笑顔で尋ねてきた、その笑顔にも救われた。

物事には道理がある。先に生まれた人が先に次の世界に行くのである。戦前戦中世代の方達が次々に亡くなっている。僕の子供達が僕の年齢になった時に、子供達の知っているお父さん、お母さんが順番にこの世から去って行く。これは、不変の真実である。
あなたたちは何処へ行くの?その時に、子供達は何を思い、何を願うのか・・・。

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