院長のコラム

オケツニイレズンバ

大腸内視鏡検査の思い出

「虎穴に入らずんば虎児を得ず」有名な故事である。この故事をもじって私なりに故事熟語を作ってみた。「オケツに入れずんば内視鏡医と言えず」まさに名言、いやもとい迷言である。

内視鏡駆け出し医の頃、といってももうすでに5年経過していたが、大学院に入学していたため臨床医としては駆け出しであった。周囲にそんなことを説明しても理解してくれるはずもなく、すぐに、大腸内視鏡検査をすれば直腸より先に進ますことが出来ないダメな5年目医のレッテルを貼られた。自分は内視鏡医に向いていない、一生盲腸には到達することが出来ない、と眠れぬ夜を何度過ごしたことか。忘れられない思い出がある。いつものように悪戦苦闘して大腸内視鏡検査をしていたところ、突然モニターの前に大きな突起物が出現した。これが大腸癌か、と勇んで看護師さんを呼んで「大腸癌ですよね?」と耳打ちしたところ、「何を言っているんですか、バウヒン弁(大腸と小腸の境目にある逆流防止弁)ですよ。」笑うに笑えない、しかし会心の出来事であった。そうこうするうちに徐々に上達して来たある日、大学から指導医の先生が地方に技術指導に来られた。緊張の中で大腸内視鏡検査を終えていただいたコメントが、「なかなか筋がいいな。」であった。そのコメント主は綾部時芳先生、現北海道大学大学院先端生命科学自然免疫研究室教授であった。その後ある程度上達してきて少し天狗になっていた頃、岩内協会病院に赴任していた頃、さらなる飛躍に繋がるコメントをいただいたのが、現市立旭川病院消化器内科診療部長である斉藤裕輔先生であった。
両先生を含めてたくさんの諸先輩から助言指導をいただいてきた。その後も、たくさんの同僚の検査を見学観察し、たくさんの後輩の検査を観察指導して来た。直腸より先に進めないダメ医者が、いつの間にか一過言をもの申す自称指導医になっていた。それが大きな勘違い、誤り、独りよがりであったことが今回の体験で身にしみる程分かった。井の中の蛙であったことを、否が応でもこの体に痛みが刻み込まれ納得させられた。イチロー語録という世界のイチローがその時々に発する言葉、哲学的な宗教じみた、まるで修験者から発せられたような言葉を折につけ聞く事がある。イチローには遥か及ばない、全くお呼びでない地方のダメ医者でも、自称技術者の端くれである。今回の経験は、そこを境に、そこを瞬間に、そこで世界が変わったような気がした、と思う、いやそんな気がする、そんなことが有ったかも???痛みのため大量に放出された脳内モルヒネが、私の記憶を遠い過去にさせる。

「大腸検査は過ぎてこそ冷静に振り返られるもの、そしてその瞬間は悲しいくらい切ないもの」

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