院長のコラム

デンパサール国際空港にて 

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出発前にネットでバリのアマン体験記を読んだ。ある体験記には、飛行機の到着ゲートにアマンのスタッフが出迎えてくれていて、アライバル・ビザ取得の手配、入国審査、荷物の受け取り、税関の通過を滞り無く済むよう支援してくれた、と書かれていたのが印象的だった。

ほぼ予定通りにデンパサール国際空港に到着した。彼らはいつ現れるのだろうと心待ちにしていたが一向に現れない。到着ロビーに来ても誰も現れない。それどころか、アマンのプラカードを持ったスタッフさえいないのである。見間違いだろうかと、あふれんばかりの現地出迎え係員の前を何度も往復したがアマンのスタッフはいなかった。呆然と立ち尽くす我々夫婦に、運転手と思しきたくさんの現地人から「タクチー?」という声を浴びせられるはめになった。引きつった笑顔で「ノーサンキュー」と言うのが精一杯だった。しまいには、我々夫婦の後をしつこく付いて来る運転手からインフォメーションへ行くよう勧められた。デスクに座る女性に僕の拙い英語でアマンのスタッフを探していることをお願いしたが、流される館内放送に誰も反応しなかった。現地モードに切り替えた携帯電話でホテルに電話してみたが、電話番号のかけ方が間違っているのか通話音さえ響かない。

三十分以上到着ロビーでうろうろしただろうか、うまくいかないことに苛立ちがピークになった僕は妻に「もうしらん、今度はあんたがやってくれ。ホテルの住所を指さして、ここ、こことジェスチャーでやってみ。」と、後で考えると相当な無茶ぶりを、半ば投げやりになった僕は指図した。先ほど僕が行ってうまくいかなかったインフォメーションへ彼女が再度尋ねて館内放送が流れるや否や、白装束の見るからにそれらしい人間がやってきた。コピー用紙を見ながら、「ミスター・ナガシマ?」と問いかけてきた。

人生も半ばを過ぎた世間知らずのお坊ちゃんの戯言と理解して欲しい。
異国の地で、一家の大黒柱と思っていた人間とそれを頼りにしていた人間が一瞬にして入れ替わったのだ。後にいた妻が前面に出ることによって、すべてが動き始めた。俺がいれば、俺のすることは、俺の通りにすれば、すべての俺々が俺々でない瞬間を迎えた。すべてが自分の責任と思い込む、戦う時は自分が先人と考えていたような人生を送ってきた僕に、「時には後ろにいてもいいんだ。」という言葉が舞い降りた。
アマンホスピタリティを期待していた僕に、いきなりの躓きである。初めてのバリツアーに心ときめくどころか、いきなりの先制パンチである。心虚ろになった僕がデンパサール国際空港からアマンキラの道中撮った写真は、たった一枚である。
人よりも多いのではと思えるくらい数えきれないバイク、同じ海岸線なのに国道42号線とは比較にならない景色の道路、掘っ立て小屋に古びれたレンガ作りの家々、快適とはいえないサスペンションから伝わる振動を感じながら、眼前の光景をぼんやりと眺めていた。
「ここは本当にリゾート地なのだろうか?」

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