院長のコラム

ホスピタリティのかたち

あるイベントにて

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去る二月十五日、日曜日の十九時から美容院で、「ホスピタリティのかたち」という題目で講演を行った。美容師という枠に囚われたくないと願う若き経営者が、サロン情報発信のため、異業種交流のため、はたまた若い世代のハローワーク等、様々な思いを込めたトークイベントを開催した。イベント名はイタリア語で心を指す言葉「CUORE」、その第一回の栄えあるゲストに迎えられることになった。今後続いていくだろうイベントの今後や方向性を占う大事な初回である。大役であり荷が重たかったが、ものは考えよう、クリニックスタッフの研修の場も兼ねさせてもらうことにした。

二月十九日、大過なく開院八周年を迎えることが出来た。受付二名、看護師二名計四名の常勤でスタートし、現在はこの四名に二名の非常勤を加えた六名が働いてくれている。残念ながら、開院当初から勤務してくれている方は一名のみになった。結婚・妊娠・出産等如何ともし難い理由で円満退職していったスタッフもいれば、クリニックの社風に馴染めなかった人、院長の不徳のいたすところ辞めざるを得なかった方々もたくさんいたことは事実である。八年経ってようやく価値観を共有できる陣容になった、と開院日の記念会では感慨深かった。
初心忘れるべからず、開院前後自分がどのような想いでクリニックを設立したか改めて振り返るとともに、初期の頃を知らないスタッフには、開院当時の右往左往、試行錯誤、紆余曲折を知ってもらうべく、約40枚程度のスライドを何時間もかけて作成した。

当日は、クリニック関係者も交えて総勢二十五名が参加してくれたらしい。もちろんだが、ホスピタリティという言葉は日本語ではない。敢えて訳せば、「おもてなしの心」になるだろうか。心身ともに病んだ患者さんに対して配慮を最大限払うことは至極当然のことのように思うが、殺伐した空間に独特の匂い、硬くて冷たいソファー、無造作に流れるテレビの音量と手垢のついた雑誌。しかも、いつ呼ばれるか分からない長い待ち時間。ホスピタリティと同じ語源を有するホスピタル(病院)に、「おもてなしの心」がないことを医師になってからずっと疑問に思っていた。したがって、自分が開業する際はあえて逆説的に、「ホスピタルにホスピタリティを」を経営理念に据えた。言葉で語るのは簡単だが、ホスピタリティを如何にクリニック建築で具現化していくか、クリニックの医療環境に自分の想いを落とし込んでいくか、具体例を提示しながら四十分ほど話をした。

美容院オーナーが目論んでいたようなイベントになったかどうか分からない。聴衆者の心にどのように届いたか定かではない。有意義な時間になったかもしれないし、無意味で無益な一時だったかもしれない。自分のレクチャーの評価はさておき、長嶋雄一クリニックが現在に至るまで、いかに困難な過程を歩んできたかをスタッフに理解してもらったことは、何ものにも替えられない貴重な時間だったと感じている。というのも、翌日からのスタッフの言動がいつも以上に充実していたからである。苦労は買ってでもしろ、要した苦労や時間があっという間に吹っ飛んでしまった。

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