院長のコラム

人生の選択

鎌田先生教授就任会
16-7-23

六月四日は東京、翌日五日の日曜日は岡山である。友人である鎌田先生の教授就任会が岡山で開催されたからである。早朝新幹線で東京を発ち、妻は新大阪で降り僕はそのまま岡山駅に向かった。今振り返ると、五月・六月は公私に渡り催しものが多く、その出席のため週末はほぼ自宅にいなかった。院長コラムの更新がままならなかったのは書く時間がなかったからである。

鎌田先生との出会いは、父を亡くして武者修行に出た川崎医科大学時代なので十四年ほど前に遡る。飯田三雄先生を頼って母校へ戻ったものの、ほどなくして飯田先生が九州大学に赴任されることになった。その後、新教授である春間先生とともに着任されたのが鎌田先生であった。母校とはいえ落下傘で戻ったため何となく溶け込めずにいた僕、縁もゆかりもない地で不安を抱えていた鎌田先生、年齢も育った環境も全く異なる二人であったがすぐに意気投合した。いつも学食で夕飯を食べながら、公私に渡り相談に乗ってもらった。僕が地元の基幹病院に赴任した後も、学会発表等学問的に指導をいただいた。開業後は、年に一回程度、研究会や学会時に時間が許せば会食を続けてきた。

昨年初頭、春間先生退官後の教授に准教授の塩谷先生が昇格された。塩谷先生は、和歌山県立医科大学卒業で長く県下の医療に貢献されてきた方なので、和歌山県人としてはこの上なく喜ばしいことであった。鎌田先生も候補の一人だったはずだが教授選へ立候補しなかったようだ。その辺りの経緯を伺い知ることは出来ないが、春間先生の退任の会で司会進行をする鎌田先生、その席で新教授の挨拶をする塩谷先生、二人の対比を僕は複雑な気持ちで眺めていた。その後、数回メールでやり取りしたが、鎌田先生は僕と違って寡黙な方なので今後について多くを語らなかった。けれども、大学人としての道を断念するのでは、僕はそう感じていた。
息子の受験で慌ただしかった立春、教授就任のメールが鎌田先生から届いた。「努力は報われた。」ふと思った。教授就任式は、先生の人柄を表すような実直で温もりを感じさせる素晴らしい会であった。

ある時期、大学人として過ごした二人だが、その後全く異なる人生を歩むことになった。片や教授、片や地方の開業医、この理由は僕には分かっている。我が強すぎる、辛抱が足りない、理性より直感で行動するからだ。勤務医としての素養に欠けている。あと最も欠落しているのは、運気を呼び寄せる力である。人間性が劣り運がない僕だが、医療に従事するという点に置いては同じ土俵に立つ二人である。鎌田先生をお手本に、内視鏡医としてはもちろん、最近取り組み始めた介護・福祉の分野でも真摯に取り組まなければならないと心を新たにしている。
心のライバルの存在は、道無き道を歩んでいる僕にとっては何と頼もしいことか。とともに、いよいよ我々の世代が教授になる年齢になったのだ、時代の流れを感じずにはいられない。

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