院長のコラム

作家再来訪~クリニックの新しい仲間たち~

「接吻」と『ENDLESS STORY」 

10-12-9-1

自分は日本人なのだろうか、と思うことがある。日本人のステレオタイプなイメージ、すなわち、礼節をわきまえる民族、からは相当離れているように思う、特に酒席では。お酒を飲むと、時には鬱積しているネガティブな思いを吐き出すかのように歯に衣着せぬ言動で一刀両断、時にはまるでラテン系かと思う程陽気に楽しく、何れにしても同席してくれた方からは「また誘ってください。」と有り難い言葉をいただく。この文章を読んでいる方から「それを社交辞令というのですよ。」と咎められそうだが、先週、先々週とお付き合いの度が過ぎたのかもしれない、さすがに体力気力とも萎えてしまった。ちなみに今話題の歌舞伎役者のように、飲んで喧嘩を売ったり暴れたりすることはない。その点は重々わきまえている。ただ、急な階段から落ちたことがあるだけで自作自演ですんでいる。
酔った勢いで電話をあちこちにかけるが、お陰さまで無視されることはなく必ず何らかの返事がある。酔った勢いで電話しているので、翌日電話があると「何か用事ですか?」とこちらから電話をかけたにも関わらず思わず返事をしてしまう。「昨日の夜、先生から着信履歴があったので電話したんですが・・・、」、当方の答えはいつも、「たぶん一人で寂しかったのかもしれません、ごめんなさい。」ですましている。

今年の2月、阪神百貨店で古畑さんの個展が催された。日常生活の中でなかなか会うことが出来ないので、泊まりがけで個展へ表敬訪問をした。その時飾られていたのが、古畑さんがクリムトにオマージュを捧げた、まさにその題名も「接吻」であった。確か8号程度の作品だったと思う。クリムトに影響されたことは構図、色使いを見れば一目瞭然であったが、その絵には古畑ワールドが満載されていた。この絵に興味を持ったもう一つの理由は、今まで古畑作品を見て来て、有名作家の作品をモチーフにした作品を見たことがなかったからである。その個展で飾られていた作品の中で一番気に入った作品であったが、如何せんクリニックに飾るには少し小さすぎた。
個展終了後、画商も交えて会食をした。古畑さんも、画商の咲間さんも結構飲める。僕も弱いながらも楽しく飲める。宴もたけなわ、皆がほろ酔いかげんになってきたところで、気が大きくなり怖いもの知らずになった僕は、「『接吻』いい作品ですけどね、もう少し大きければさらにいいですよ。ついでに言うと、古畑さんはBOXクレイアートがオリジナルですけれども、実は油絵がいいんですよ。そうだ、クリニックにはBOXクレイアートしか飾られていないので、一度クリニックを題材に油絵を描いてくれませんか。」と言ったような、おそらく依頼したのだろう、こちらは酔っているから覚えているようないないような。そうでなければクリニックになぜ、自分が思い描いていた作品が納入されたのか理解出来ない。

「接吻」はラウンジに設置した。以前個展でみた作品よりもはるかに圧倒的である。存在感が全く異なる。大きくなったことで大雑把になったかというとむしろ逆で、大きくなった分世界感が広がり、微にいり細にいり二人を取り囲むディテールがより複雑なものになった。シンプルな白壁のラウンジが一気に華やいだ、
「長嶋雄一クリニック」の正式名称は「ENDLESS STORY」だそうである、受付横に設置した。クリニックの前には愛車ISFが鎮座している。夜空には古畑ブルーと夕焼けのような赤色の対比が印象的で、元々は資材置き場だった駐車場が幻想的な海になっている。見ていて飽きない、いや見続けていたい作品である。特にISFを中心に描いてくれたのには感慨深いものがある。長嶋雄一クリニックとともに苦楽を歩んで来たこの強い思い入れのある車は、訳あって新春には売却しなければならないからである。
何れの作品もスタッフ、患者さん、出入りする業者さんから大好評である。癒しのクリニックにさらに華が添えられたようだ。日常生活において、花と絵画は心にゆとりを与えてくれることを改めて実感させられた。花や絵画のように、人を癒したり勇気づけたり、そこにその人がいるだけで華やぐような人間になりたいものである。
10-12-9-2

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