院長のコラム

歌うこと

それは伝えること
15-11-23-1
毎週水曜日十八時から相棒とギターを習っている。趣味と実益に加えて、飲み会のための口実も兼ねていた。けれども、ギターを弾くことの異なる有用性を最近感じている。左でコードを押さえ右手でリズムを刻む。演奏しているミュージシャンを見るといとも簡単そうだが、実際に取り組んでみると一小節弾くのもままならない。しかも、覚束ない演奏に歌をのせようとすれば至難の技である。認知症が社会問題になっている昨今、ギターの練習は自身の認知症予防にも役立つのでは、と期待している。

通常一人一時間程度のレッスンだが、我々は二人で一時間を折半している。レッスンと言っても、教材を用いて段階的に進めていくわけではない。課題曲や自分の弾きたい曲の練習の成果を披露して、指導・修正してもらっている。故に、日頃の練習が肝要で、練習量が少ないと半時間のレッスンでも時間を持て余すことになる。
ある日、相棒が所用でレッスンを休んだ。普段三十分のものが、一時間の授業になった。退屈な内容にしたくなかったので、ここぞとばかり日頃聞けなかった悩みを投げかけてみた。「カラオケで三曲も歌えば声がかすれるんですが、どうすればいいのですか。」と僕、直ぐ様「それはですね、そもそも発声が出来ていないからですよ。」と先生の返答。そこから、ギターの練習が急遽発声練習に変わった。
要諦は三点、喉を開くこと、声帯を震わせること、腹式呼吸をすること、である。文字で書くと一行だが、発声の基礎の基礎練習であっという間に一時間が過ぎた。

次の週も相棒は休んだ。大阪フェスティバルホールの浜省のコンサートに行ったからだ。今回も一時間の長いレッスンである。少しだけ練習した発声法で課題曲を歌ってみた。「声が少し出てきましたね。」と先生、ほくそ笑む僕に間髪をいれず、「歌い方が平坦で抑揚がありませんね。」ときた。一言一句が分かるように、特に母音の発声を意識するよう指導された。
しかも、歌詞の意味をもう少し汲み取るよう指導された。ミスチルの「しるし」の一小節に「心の声は 君に届くのかな?」がある。「この部分は、誰かに尋ねているのですか、それとも自問自答しているのですか?」と先生に問われた。「・・・・、」絶句するほかなかった。答えは後者であることは分かっている。要は、自分を諭すように歌いなさい、ということなのだ。今まで、表面上だけで歌っていたこと、もっと言えば、字面を追うだけの歌い方をしていたことを知らしめされた。

何でもそうだが、習うということは、とかく技術に走りがちになる。だが、松本先生は、伝えることの大切さ、ギターはあくまでも補助的な役割に過ぎないことを教えてくれた。現役のミュージシャンに習えて心底良かったと感じている。
後日、教わったことを意識して自宅で歌っていたら、妻に「何を大袈裟に歌っているのよ。」と笑われた。伝わらない人には伝わらないのだろう、自分に言い聞かせた。

 

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