院長のコラム

猫に小判、長嶋に◯◯ 

情けない週末

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「猫に小判」とはご存知のように、いくら価値あるものでも価値の分からない者に与えるのは無駄であることの例えである。長嶋に小判、自分自身の頓着のなさ、執着のなさ、こだわりのなさに辟易する出来事が先日起こった。

先週末京都で日本医学会総会が開催された。下衆な話だが、専門医更新の点数稼ぎには日帰りもできる地の利である。時を同じく、懇意にさせていただいている呉服店の春の展示会が京都で開催された。顧客というには口幅ったいが、公私に渡る付き合いのお陰で招待状をいただいた。渡りに舟とばかり、医学会総会と呉服店の展示会に泊まりがけで参加することにした。
感謝祭も兼ねた展示会の目玉は、何と京都吉兆嵐山本店での夜会であった。嵐山吉兆と言えば、誰もがその名を知る日本を代表する名店中の名店である。日本料理の頂点を極めた料亭であり、ミシュラン・ガイド関西でも三ツ星の評価を得ている。まさか自分が行けるとは夢にも思わなかったので、下調べにホームページをのぞいて思わず目が点になった。夜のメニューが4万8600円からとのこと、僕のような卑小な人間からみれば値段は六つ星相当、宝くじが当たってもきっと行かないだろうな、内心つぶやいた。

当日は早朝の電車に乗って学会に参加し、夕刻に展示会場を訪れ、前もって預けていた着物に着替えて嵐山に向かった。見頃は過ぎたとは言え、まだまだそこここに桜の花が散見され春爛漫といった風情を呈していた。桜の季節に加えて大きな学会、それに秋篠宮が来られているせいか、京都市内は相当渋滞していた。定刻をやや過ぎて嵐山に到着し、嵐山吉兆の門を恐る恐るくぐった。夜席は、20数名が一度に会せるような大広間だった。手始めに供された桜の花びらが入れられたお茶を飲みながら、隣席のご婦人に「これで一杯、千円ですかね。」などと辛口をたたきながら宴席は始まった。
世界の吉兆の初体験、しかも出される料理は数万円に久しぶりの着物を着ての宴会、緊張と興奮で地に足がつかない環境の中で、提供される料理を堪能する余裕は全くなかった。最高峰の料理が、ただ喉元を通り過ぎるだけだった。宴もたけなわになると、呉服店のはからいで幇間芸(ほうかんげい)が始まった。別名太鼓持ち芸を目の当たりにして、視覚・聴覚はもちろん前頭葉までそちらに首ったけ状態になった。漫談に三味線に踊り、そして物真似と一人芝居、素晴らしい芸を目の前に美味しい日本酒が手酌でどんどん進んで行った。
宴会芸も終わり、さて食事をとろうと思った時には、お盆の上には果物が運ばれてきていた。「あれ?俺は一体何を食べたんだろう。」茫然自失する他なかった。

最高の器に盛られた日本屈指の料理、名だたる有名人が集った部屋に入念に手入れされた庭、しっかり教育された仲居さんのおもてなし。自分の人生において史上最高の宴席で、二度と経験出来ないような場を設けていただいたにも関わらず、今回の有り様である。「嵐山吉兆に行って来てん。」「どうだった?」「よく覚えてへんわ。」、価値あるものでも価値の分からない者に与えるのは無駄である。
「長嶋に吉兆」は「猫に小判」「馬の耳に念仏」と同義語である。

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