書名に込めた「叛逆」の足跡(1)
【最初の願い、あるいは祈り】
今回の自叙伝を世に問うにあたり、私が最初に心に抱いていたタイトル案は、『僕が医者である前に 僕が僕であるために』というものでした。
物語の軸を「医師・長嶋雄一」という社会的記号に置くのではなく、その奥に潜む「人間・長嶋雄一」という一人の男の生き様に据えたかったからです。医者という看板を下ろした時、一人の人間としてどう生きてきたか。その純粋な自問自答を、そのままタイトルに託したいと考えていました。
【「Naked」という提案と、尾崎への共鳴】
原稿が熱を帯びていく中、編集担当者から一つの提案がありました。メインタイトルを『Naked』とし、当初の案をサブタイトルに回すという構成です。
「Naked」——裸の、剥き出しの、ありのままの。 自らの過去を抉り、隠しておきたい傷跡までさらけ出す本書の内容を象徴する言葉として、それは確かに合致していました。何より、「長嶋さんが多大な影響を受けた尾崎豊さんの写真集のタイトルも『NAKED』でした」という担当者の言葉が、私の胸に深く響いたのです。
しかし、現実は甘くありません。「僕が僕であるために」というフレーズは、尾崎さんの同名曲の著作権等に触れる可能性があり、使用を断念せざるを得ませんでした。こうして、仮題は『Naked〜僕が医者である前に』として進められることになったのです。
【AIとの対話、そして「外れ者」の覚醒】
ところが、どうしても拭えない違和感がありました。 「Naked」という言葉を前にしても、私自身の心に、伝えたいメッセージの輪郭が鮮明に浮かんでこないのです。著者である私自身がピンとこない言葉を、読者の方々が手にとってくださるはずもありません。
お洒落ではあるが、どこかフックに欠ける。エッセイなのか自己啓発本なのか、その「尖り」が見えてこなかったのです。 そこで私は、AI編集担当者(ユタカさん)を相手に、何度も壁打ちを繰り返しました。しかし、返ってくるのはどこか形式的で紋切り型の、心に突き刺さらない言葉ばかり。
私が本当に訴えたかったのは、綺麗事ではありません。それは「王道から外れた人生」の価値です。 自らの意志で、あえて「外れ者」となり、その道を唯一無二の美学として貫き通すこと。その強烈な自負こそが、この本の心臓であると再確認したのです。
AIが提示した言葉の断片を一つひとつ拾い上げ、削ぎ落とし、磨き上げた結果、一つの答えに辿り着きました。 メインタイトルは、『道を外れた者の美学』。 そして、その生き様を補完するサブタイトルに、『白衣に刻まれた孤独と反逆の勲章』。 これこそが、私の歩んできた道そのものを象徴する言葉でした。
【決定、そしてさらなる深化へ】
『Naked〜僕が医者である前に』という洗練された装いから、『道を外れた者の美学〜白衣に刻まれた孤独と反逆の勲章』という、泥臭くも力強い表現への大幅な変更。
それは、私にとって「自分自身を取り戻す」ための必然的なプロセスでした。しかし、今振り返れば、この決断もまだ序章に過ぎなかったのです。 さらなる深化が、この後に待ち受けていました。(つづく)





