院長のコラム

もしも僕が東出君なら

俳優の東出昌大君は、今や日本国民の敵である。妊娠・出産・育児に奔走する杏さんを尻目に、十歳年下の女優と不倫していたらしい。そのことがネットニュースやTVのワイドショーで連日取り上げられていている。CM降板、出演しているドラマの視聴率低迷、公開予定のドラマや映画の延期もしくは撮り直し、果ては彼の演技力まで、とにかく総スカン状態である。税金の申告漏れや所得隠しのチュートリアル徳井に対して激しい憤りと嫌悪を感じた僕だが、今回の騒動に対してはあまり頓着しない。納税は国民としての義務である。それを怠れば罰則が課され、時には刑罰の対象になる。しかし、不倫はあくまでも不法行為であり夫婦と家族の問題である。だけども、俳優なんて虚業なのに、好青年というイメージを定着させたが故にその代償は大き過ぎた。

「はたして、この世に清廉潔白で純粋な人間っているのだろうか?」と僕は思う。文学や映画には駄目人間が溢れかえっている。その存在がなければ、これらは成立しないと言っても過言ではない。駄目人間を反面教師として、時には駄目人間に共感し、ある時には駄目人間に勇気づけられる。駄目になる瀬戸際でどうにかこうにか生きているのが人間、と僕は感じている。もし、僕に東出君の姿形が備わっていたとして、ミポリン(中山美穂さん)に言い寄られたら断ることが出来るだろうか。否とは断言できない。だけどぼくには東出君の容姿がない。現実は、五十代の容姿の劣る白髪のロン毛黒衣男である。女性には訝られ避けられる。近頃近づいてくるのは、マンション販売と保険の外交員だけである。しかも、莫大な借金を抱えているため遊ぶお金さえもない。容姿も金もない男には不倫なんて夢のまた夢の話である。

最近では、鈴木杏樹さんの不倫騒動も世間を賑わしている。正論で持って鉄槌を下す不倫関連のニュースを見聞きするにつれ、理想と現実の乖離を感じるのは僕だけだろうか。今や夫婦の三組に一組が離婚しているそうである。原因の一位は性格の不一致だそうだが、その他は浮気、金銭、(肉体的および精神的)虐待が上位を占める。離婚は芸能界という特殊な世界の話ではなく、我々の身近で起きている出来事に過ぎない。日常生活において、離婚経験者に対して非難を浴びせたり罵倒することなどない。むしろ、「色々大変やったな。これからまた頑張れるよ。」といたわりの言葉を投げかける。「夫婦喧嘩は犬も食わない」というくらいなので、夫婦のことは第三者がとやかく言うことではないと僕は感じている。道義的にとか人間的にどうかと説く人もいるが、僕は問いたい「あなたは公明正大な人ですか?」と。特に、自分の不倫および隠し子騒動をスルーして芸能界のゴシップを嬉々として司会する宮根誠司には。

仕事の合間にネットニュースをよく見る。木下優樹菜のタピオカ騒動や宮迫博之の闇営業問題、確かに見聞きして眉をひそめる出来事ではある。けれども、まるで犯罪者かのようにバッシングされるようなことだろうか。バッシング(叩く)は先鋭化するだけであり、本当に腹が立つならパッシング(無視)するのが一番である。「近頃、ギスギスしているな。昔はもう少し寛容的だったような気がしたけど、」と感じるのは僕だけだろうか。これが情報化社会の帰結するところなら、情報と距離を置く態度を涵養する姿勢が大事である。僕には、不倫する勇気も気力もなければ体力もない、ましてや財力もない。ないないづくしの中年男性の遠吠えである。

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