院長のコラム

九月四日、台風二十一号

八月末、台風二十一号が近畿もしくは四国を縦断、天気予報が伝えていた。しかし、急に西に進路を変えたり速度を落としたり、急激に勢いが衰えることは誰もが経験上知っていることで、僕も「台風なんてこの季節の風物詩みたいなもんだ。」と高をくくっていた。ところが、九月四日に十五件程度予約されていた内視鏡検査が、日が近くなるに連れて一件一件と徐々に減って行った。前日には、再診患者五名程度、内視鏡検査は三名、計六件にまで減っていた。台風二十一号は勢力を保ったままこの近辺を縦断すること、しかも午前中に上陸することを天気予報が告げていた。台風最接近のため、翌日休診にすることも考えたが、内視鏡検査を受ける三人の内、二名が中国人なのだ。この二人、近日中に帰国せねばならず、どうしてもその日に検査を受けたいと切望された。仕方なく開院することにした。

ところで、中国の方の診療は、我が国の医療保険に加入していない限りもちろん自費である。自費ということは即ち価格設定は自由で、超法外な価格にしても一向に構わない。しかし、そういう訳にもいかず、近頃、このような案件が徐々に増えてきたので日本の技術料を参考に価格を決めた。即ち、胃と腸の内視鏡検査を行い、大腸ポリープを内視鏡的に切除して、その上ピロリ菌の検査まで行うと約十万円程度かかる。前もって六万から十万円費用がかかることを説明しても、彼らは全く躊躇しなかった。さらに、台風接近のため通訳が大阪から来られない状況にも関わらず、しかも東京でも大阪でもなく、この田舎で内視鏡検査を受けたいという彼らの真意が全く理解できない。一体全体、中国の医療および公的保険制度はどうなっているのだろう。

九月四日、暴風雨、時折起こる激しい落雷の中、診療を行った。瞬間的に停電することはあったが、午後二時過ぎに滞りなく診療を終えることが出来た。その頃には、台風の暴風圏も過ぎて小雨となり風も一段落していた。スタッフに早く自宅に帰るよう促し、僕も帰宅の途についた。帰宅途中、道路には落ち葉が散乱し、ところところで街路樹がへし折られ、今回の台風の凄まじさを物語っていた。帰宅してびっくりした。クリニックと三キロほどしか離れていない我が家が停電しているではないか。聞くと正午からずっとだそうだ。ネットはつながらない、テレビも見られない、部屋も蒸し暑い。とにかく何も出来ない。仕事を終えたばかりの僕は、残っていたひやむぎを、やけ酒とばかりに缶ビールをお供に食べた。食べたら寝るしかない。二時間程度休んだが依然として停電したままである。夕食はありあわせにして、蝋燭の明かりを準備していた矢先、突然電気がついた。「わあーーーっっっっ、良かった!」、生まれて初めて電気の有り難みを痛感した。

田辺市は夕刻くらいにほぼ停電が解除されたようだが、次男が住む和歌山市は翌日正午過ぎまで停電が続いたようである。次男は、エアコンの点かない暗い部屋でまる一日過ごすことになった。助けに行きたかったが電車は動いていない。高速道路も通行止めのままである。不憫に思っていたが、ラインで「今日の夜十時からセレクトショップで、前から気になっていたパンツが売り出されるので買っておいて欲しい。」とメッセージが入ってきた。「え~~~、真っ暗で暑い部屋より、食事より、明日の授業より服かよ!」心配するのが突然アホらしくなった。

今日現在(九月九日)、県下および近畿圏内で停電しているところがまだまだあるそうだ。たった半日でも疲労困憊したのだから、五日も続けば・・・、想像することは難くない。一刻も早い復旧を祈るばかりである。そして、今回の台風で、連日、我が国の玄関口関西国際空港が壊滅的なダメージを受けたことが報道されている。それは、近畿ひいては日本国の経済活動の低下を意味する。兎にも角にも、一刻も早く日常生活に戻れることを願ってやまない。

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