院長のコラム

二年前の春

僕には様々な肩書がある。クリニック院長、医療法人理事長、鍼灸整骨院経営者などなど。正直に話そう、聞こえがいいものばかりだけではない。
♪馬鹿言ってんじゃないわ、馬鹿言ってんじゃないよ(By ヒロシ&キーボー)
四年目の浪人生の親、なのだ。
あまり嬉しくない肩書も持っている。うちの子供達は両親と違って相当勉強熱心なようで、早く落ち着くよう懇願しているにも関わらず受けていれてもらえずに来ている。

この四年間、現役から含めると五年間、年始から三月までが一番の試練の時期である。年明け、しばらくしてセンター試験がある。その結果に一喜一憂する間もなく、私立大学の受験が目白押しにある。二月末には国公立の前期試験、三月中旬には後期試験がある。長男の二年間はほぼ連戦連敗で、冬の寒さとともに心身にこたえた。春が来ても予備校選びと引っ越しで、春の到来どこ吹く風、春の陽気が恨めしかった。

忘れもしない二年前の三月六日、日曜日。前日土曜日が東京出張だったので、日曜午前、いつものように妻に南紀白浜空港に迎えに来てもらった。車に乗るや否や、「受かった、受かった、◯◯(長男の名前)やったわ!」、とにかく騒がしい。「何が?◯◯の結果は明日やろ。」と僕。「◯◯、試験落ちていると思ってたので、試験発表の日を一日後にずらして教えてたらしい。」と妻。空港から自宅までの二十分間、嬉しんでいいのか喜んでいいのか、本当なのか嘘なのか、まさに狐につままれたような気分だった。帰宅してネットで確認してひと安堵。しかし、ネット発表はあくまで補助的なもので合格掲示板のものが本物、と書かれている。遠方に住んでいる我々には確かめるすべもなく、合格通知書が届いて確信できた。その日は寒い日であったが我が家に少し早い春が訪れた。しかし、喜んだのもつかの間、時を同じくして次男の浪人が決定した。

勧めたわけでもないのに、次男は長男が一年目に通った予備校を自ら選択した。デジャブ、既視体験、あの予備校にあの寮、二年前の春と同じように次男の荷物を長男がかつて過ごした寮に運んだ。別れ際に「お兄ちゃんと同じ轍を踏むなよ。」「分からないことがあったら、なんでもお兄ちゃんに聞けよ。」「困ったことがあったら、いつでも電話してこい。」「頼むから同じ過ちを繰り返さないでくれよ。」、しつこいくらい次男に話した、まるで父がかつての僕に言い聞かせたかのように。(つづく)

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