院長のコラム

時代遅れが今や最先端


ここ数年、年に数回程度、表参道を歩くようになった。ラフォーレ原宿のグランドYでネットショップの実物を確認した後、表参道ヒルズのワイズとY-3の旗艦店に立ち寄る。そして、みゆき通りにあるヨウジヤマモト青山本店に突入。表参道とみゆき通りは一直線上にあり、たかだか距離にして1.2キロ、時間にして二十分程度の道程である。少し前までは東京を訪れても、表参道を歩くことはなかった。けれども現在、お気に入りのブランドがちょうど通り沿いにあるため、散策かねがねこのケヤキの並木道をぼんやりと歩くのが好きになった。たった数年だが、街の風景が激変しているのを感じている。

ヨウジヤマモトが流行っている、表参道を歩いていると実感する。ヨウジと思しきダボッとした黒い服を身にまとった若者とすれ違い、見かける頻度が訪れる度に増えている。これがみゆき通りになれば一層その密度が増し、聖地ヨウジ青山本店で最高潮に達する。行く度、お客さんの数が増え、しかも年齢層が低下して来ている。その上、外国人、特に中国人客も多くなった。渋谷西武の店長だった方が青山本店に移動してからなので、ヨウジ本店に通うようになってもうかれこれ十五年以上になるだろうか、このエリアを訪れるようになってから見たことのない光景を目の当たりにしている。ヨウジを購入するようになって三十年以上の月日が経つ。自分以外でヨウジを着ている人を見かける機会は、東京であれ大阪であれ最盛期を迎えている(ような気がしている)。ブランドに勢いがあることは喜ばしい限りだが、苦難の時期を知っている者としては不安でたまらない。

このコラムを書いてきて、こんな日が来ようとは夢にも思わなかった。以前にも書いたように、バブル崩壊後の失われた二十年間と言われる時期、日本経済は停滞・低迷の一途をたどった。それは、ファッションの世界も同様で、デフレ圧力のため大量生産による低価格・均一化が進められた。それが、ファストファッションの台頭である。リーマンショックが一層追い打ちをかけ、時代の波に乗れなかったヨウジ社は民事再生法の申請となった。諸行無常・栄枯盛衰は世の常である。ヨウジ社の勃興と衰退を目の当たりにして来た僕は、ファストファッションの流行に対する反動がいつか必ず起きると信じていた。まさかのまさか、揺り戻しの先に、時流に乗り遅れ続けてきたヨウジヤマモトがあった。時代がようやくヨウジヤマモトに微笑んだ、現在ブームなのだ。

夫婦ともどもヨウジを購入するようになって約二十五年、オム・ファムともずっと見続けて来た。個人的に感じていることは、ヨウジヤマモトは一貫して流行とは対極にあるブランドだということである。だから、今のブームには甚だしく疑問を覚えている。「かっこいい」「イケてる」「クール」「スタイリッシュ」、こんな安っぽい言葉で語られるブランドではない。けれど、これも時代の趨勢なのだ。ブームには必ず始まりがあり、必ず終焉を迎える。今、その成り行きを僕はそっと見守っている。そんなことを思いながら、ある歌が脳裏をよぎった。

ねたまぬように
あせらぬように
飾った世界に流されず
好きな誰かを思いつづける
時代おくれの男になりたい

目立たぬように はしゃがぬように
似合わぬことは無理をせず
人の心を見つめつづける
時代おくれの男になりたい (作詞 阿久悠 曲 森田公一 歌 河島英五)

 

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