院長のコラム

立春朝搾り

年末から年始にかけての体調不良がなかったかのようにいつも通りの生活が出来ている。当時、肉、脂っこい料理、コーヒー、ビールは見るのも嫌だった。このまま食の嗜好が変わって体質改善出来るかも、一瞬考えたが思い過ごしに終わった。体調が戻れば、体が拒否していた食べ物を体が欲するのだ。健康であることは即ち体が求めるものを美味しく食べられること、と改めて実感している。

体調が戻ったらいつものように誘ったり誘われたり、週二回程度、友人達との外食を楽しんでいる。年明けそうそう、イタリアンのオステリア会、ビール工房でのライブ等のイベント事にも誘われた。立春の二月四日の日曜日には、毛色の異なる食事会が開催された。高校の後輩である居酒屋店主とグループで食事をした際、立春朝搾りの話題が上った。春を迎える祝い酒で立春の早朝に絞り上がる生原酒だそうだ。「超辛口」で有名な奈良にある春鹿の立春朝搾りの瓶詰めに酒店店主と行くので、一緒に行かないか誘われた。酒を呑んだ勢いで二つ返事に了解したものの、真冬の早朝の作業はかなり厳しいようで、二人の配慮により持ち帰ったお酒を飲酒する会の開催となった。日曜なので家族ぐるみで集まろうということになり、七家族、計二十数名が居酒屋に集った。

行ってみてびっくり、春鹿だけと思いきや和歌山の紀伊国文左衛門のものまで用意されていた。酒店店主が奈良に、居酒屋店店主と友人達が和歌山海南に早朝から取りに行ってくれたそうだ。我々参加者は彼らの苦労も露知らず、美味しいお酒と料理に舌鼓を打った。春鹿はフルーティーで芳醇、片や紀伊国文左衛門はさっぱりスッキリ、料理と合わせて飲むなら紀伊国文左衛門、お酒をじっくり楽しむなら春鹿という総意になった。純米吟醸生原酒・立春朝搾りという一括りの名称が付いているが、蔵元によって趣向が随分異なることが理解できた。会自体も子供を含めた家族ぐるみということもあり、アットホームで心地よいものになった。立春を迎えるおめでたいお酒で、全身のアルコール消毒をすることになってしまった。

その前日は節分だったが、我が家では節分に豆まきをしない。ましてやその翌日が立春であることを意識したことはなかった。今年の冬はとにかく寒かった。それ故に春の到来が待ち遠しかった。ひょんなこと、立春朝搾りというお酒の存在を知ることにより、節分と立春の行事の意味を改めて理解することになった。恥ずかしながら、日本人なのに日本の行事のことを知らなかった。これを機に日本酒を通じて、もう少し旧暦の行事について知ろうと思った。来年の立春朝搾りが楽しみだ。あとどれくらい現在の調子でお酒を飲めることが出来るのだろう。

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