2月14日、青山と日比谷の交差点にて……僕は、星を贈る。(第三話)
【この文章のはじめに、ハズレモンから】
帝国ホテルの静かな光が差し込むプールで、僕はいつものように優雅な四泳法を披露し、日常の澱(おり)を洗い流そうとしていた。
……はずだった。
だが、そこで僕を待ち受けていたのは、予期せぬ「激痛」と、一流ホテルの静寂を打ち破りかねない情けない醜態だった。助けを呼ぶこともできず、プールサイドで微動だにできなくなった自称・多種目スイマーの孤独な闘い。
なぜ僕は禁忌を犯し、己の「馬と鹿(バカ)」加減に打ちのめされることになったのか。
特別階の高揚感から一転、日比谷の光の陰で繰り広げられた、僕の滑稽な顛末をお届けする。
【くすんだ窓景と、スイマーの矜持】
ベルスタッフに導かれ、部屋の鍵を開けたのは十五時半過ぎだった。
インペリアルフロアとはいえ、窓の正面には日生劇場、斜め左には日比谷公園の緑が間近に迫る。
僕にとって上京とは「ハレの日」そのものだ。ゆえに、東京のパノラマを一望できるモダンラグジュアリーな高層ホテルを選ぶことが多い。だが、その日はあいにくの曇り空。特別階に足を踏み入れた高揚感とは裏腹に、眼前に広がる光景はどこかくすんで見えた。
千葉さんとの約束まで、二時間もある。
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