2月14日、青山と日比谷の交差点にて……僕は、星を贈る。(第一話)
【この文章のはじめに、ハズレモンから】
これからこの文章を開くあなたへ、ひとつ深く、静かな問いを投げてみたい。
「あなたには、幼き頃の旅の『思い出』はありますか?」
それは甘やかな郷愁だろうか、それとも、どこか眩しくて気恥ずかしい記憶だろうか。 僕にとってのそれは、五十年前に抱いた、なんとも浅ましくも強烈な「優越感」の記憶である。
「日本一の場所に泊まったぞ」と、幼い胸を張ってクラスメートに吹聴して回った、あの嫌味なガキンチョ。誇れる素直さも持ち合わせず、妙に歪んだ矜持だけを肥大化させていた少年は、あれから半世紀の時を経て、そのまま還暦を迎えようとしている。
あの日比谷の聖域へ、僕は再び挑む。
だが、旅は初手から思い通りには進まない。満室の特別階、予約の取れない名物バイキング。目の前に突きつけられる「思い通りにいかない現実」を、大人の男はいかにして裁き、仕立て上げ、夜の銀座へと船を出したのか。
モードの黒を纏い、五十年前の「嫌味なガキ」の影を連れた、僕の東京行が今、幕を開ける。
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