院長のコラム

「孫という名の宝もの」を前に、男の矜持はどこへ消えたのか:孫と過ごす日々(第二話)

【サバイバルレースの途上と、蔑んでいた「目尻の緩み」】
大泉逸郎のミリオンセラー『孫』。その冒頭で歌われる「なんでこんなに可愛いのかよ 孫という名の宝もの」というフレーズを、かつての僕は冷ややかな目で見つめていた。
同世代の友人たちから「孫ができてね」などと目尻を下げる話を聞くたびに、ハズレモンたる僕は、「やれやれ、それは己が歳を取った証左」と内心、鼻で笑っていたのだ。
当時の僕にとって、人生とは常に緊張感に満ちたサバイバルレースだった。己の血脈に刻まれた「遺伝的に長生きできないかもしれない」という切迫感と、背中にズシリと重くのしかかる莫大な借金。それらから目を背けず、黒衣を纏って走り続けなければならない男にとって、孫の惚気話に同調して口角を緩めている暇などどこにもなかった。
そもそも我が家の子供たちに結婚の気配すらなく、「孫」なんてどこか遠い異国の出来事だと高をくくっていたのだ。

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