院長のコラム

『41歳の地図』 PART4

『開業医は悪者か?〜開業して思うこと〜』 
我が家の朝刊は日経新聞である。他紙はそれぞれの立ち位置が鮮明で、そこここにみられる主義主張が時に煩わしい。その点日経は、経済重視で、スポーツ面が少なく、3面記事も基本的に誇張がなく事実のみを伝えるという姿勢が他紙より分かりやすい。しかし、最近の日経の開業医に対する視点にはどうも納得がいかない。要約すれば「勤務医は開業医に較べて激務にも関わらず、開業医の方が何かと優遇され給料も高い。これはけしからんので、開業医の診療報酬を下げるべきだ。」マスコミによくありがちな、開業イコール金儲け主義というレッテルを貼りイメージを作り上げ、悪者に仕立て上げる手法である。ご存知のように、医療には管理統制経済システムがしかれている。日本全国どこでも価格は同一、適正な医療がなされているかどうか常に支払基金に管理されている。同じルール下で競争してなぜ給与に格差が出るのか?結果として得た報酬を、勤務医より多く受け取るのは悪なのか?これが企業競争なら企業努力の成果として讃えられる。トヨタは世界一の企業で儲け過ぎているから、トヨタだけ税金を多くとろうという話には決してならないはずだ。家族・従業員に対する責任の重さ、万が一のリスク、診察(検査)している患者数を考えれば、給与格差はあくまでも競争原理にのっとった結果に過ぎない。市場競争の大切さを訴える日経新聞がこの程度の理解なので、他紙は言うに及ばない。これが、勤務医を15年した上で開業医に転身した私の納得いかない率直な意見である。
開業して約1年になる。開業前はまるでデビューする前のミュージシャンのような気持ちだった。自分が今まで学習してきたこと、経験してきたこと、準備してきたこと、自分の想いを世に問いたいという意気込み、ビートルズのようにオーバーナイトセンセーションを巻き起こせるに違いない、と思った。しかし、現実はそうはうまくは行かないものである。田辺市の医師会報にも書かせてもらったが、開業とはまさに演歌である。地道な努力の積み重ねが大切なことを今しみじみと実感している。至極当たり前の話だが、人は病気にならないと患者さんにならない、そして新規開業医を受診するような人はかかりつけ病院がない場合である。よくよく考えるとそういう人は決して多くないのである。勤務医時代、1日30〜40人程度の外来患者さんを診察していたが、それはあくまでも長年の積み重ねと大病院の看板で来てくれていたのだ。今はとにかく、今日来てくれた僅かな患者さんに全力投球で接すること、と日々自分に言い聞かせている。
『おわりに』 
以上が41歳の開業したての男の本音である。今春、長男が中学に入学する。今、彼がこの文章を読んでも何の事かさっぱり分からないだろう。当初、県医師会の先生達に自分という人間を紹介するつもりでこの文章を書いていたが、最後に改めて読み返してみると、41歳の父親の20年後の子供達へのメッセージになったような気がする。このような機会を与えてくれた水本先生に感謝したい。そして、このエッセイの題名を、高校時代私の心の導火線に火をつけてくれた尾崎豊に敬意を表してつけたい。

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