院長のコラム

「パンダ狂騒」の裏側で

黄金週間が明けてすぐの5月下旬、出版の打ち合わせのため平日に東京へ行くことになった。東京行きが決まってから、南紀白浜から羽田へ向かう最終便の予約状況を何度も確認した。
しかし、予約は満席で、空席が出ても正規料金のため4万円以上かかる。一方、帰りの羽田から南紀白浜への最終便は、変更不可の席ならば1万5千円程度。先にこちらを予約し、出発直前まで往路の飛行機を待つことにした。だが結局、予約は取れず、JRで上京することになった。飛行機と割引料金は同程度だが、時間がかかるのが難点だ。新大阪から東京までの新幹線は2時間半とそれほど苦ではないが、同じ時間がかかる紀伊田辺から新大阪までが辛い。

黄金週間前後、僕はイベントや買い物で隔週ごとに週末や祝日に大阪へ出かけていた。いつも午前中に大阪へ向かい、夕方に戻ってくる。行きも帰りも阪和道はスムーズだったが、反対車線は常に交通量が多く、印南インターチェンジ付近では毎回渋滞ができていた。
「なぜだろう」と考え、すぐに理由がわかった。首都圏や京阪神の人々がパンダを見に押し寄せているからだ。4月24日、白浜町にあるテーマパーク「アドベンチャーワールド」が、飼育しているパンダ4頭すべてを中国に返還すると突然発表した。これは地元住民にとっても「寝耳に水」の出来事だった。

真相は定かではないが、返還の背景として主に2つの説が囁かれている。1つは、親中派として知られる二階俊博氏の政界引退と、その息子が衆議院議員選挙で落選したことだ。中国は、今夏の参議院選挙で二階氏の息子が落選することをすでに織り込んでいたのだろうか。もう1つは、親台派の元国会議員が白浜町長に当選したことだ。パンダの産地で知られる地域の行政区から友好都市提携の話があった際、町長がこれを断り続けたと言われている。いずれにしても、政治的な思惑が働いたに違いない。
返還決定後、NHK和歌山の夕方のニュース番組では連日この話題で持ちきりだった。インタビューコメントは「パンダに会えなくなると寂しい」「最後にもう一度会っておきたい」「何度も来ていたので悲しい」といった、感情的で情緒的なものばかりだった。僕は酒を飲みながらテレビに向かって「悲しい思いをさせたのは一体誰やねん!」と毒づいた。

パンダの貸与額は公表されていないが、2頭で年間1億円以上と言われている。それ以外にも、飼育費や環境設備費など莫大な費用がかかる。実際、カナダやフィンランドではこれらの費用を賄えず、契約期間満了前にパンダを返還したそうだ。
白浜にパンダが来てから30年以上、この間に17頭が生まれた。高い金額を支払い、繁殖にも多大に貢献したにもかかわらず、突然の契約期間満了による全頭返還。この一件で、中国という国の理不尽さ、尊大さ、狡猾さ、身勝手さ、そして不義理さを、民間レベルながら痛感した。これ以上のことが国家レベルで行われているのだから、中国との付き合い方は非常に厄介だ。パンダの愛くるしい仕草の裏に隠された、表面の白黒とは裏腹なドス黒さに戸惑うばかりである。

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