院長のコラム

モードの哲学と僕の試行錯誤から到達した視点:山本耀司とジョルジオ・アルマーニ(1)

(画像はAIによるイメージです)

「ヨウジヤマモト」—このブランドは、30数年来、僕の精神を形成する制服であり、知的な戦闘服であると言っていい。その深遠な黒と鋭利なカッテイングは、僕という個を表現する上で不可欠な要素となった。しかし、この揺るぎないスタイルにたどり着く前、僕が纏っていたのは、「ジョルジオ・アルマーニ」のセカンドライン「エンポリオ・アルマーニ」だ。まだファッションの深い哲学に触れる前、医学部を卒業し、多忙な臨床の現場に足を踏み入れる前後の、「服を着ること」に確信を持てないでいた時期の話である。話せば長くなるが、「エンポリオ・アルマーニ」から「ヨウジヤマモト」への移行は、単なる趣味や流行の変化ではない。それは、僕自身の内的な探求の軌跡であり、知的な審美眼の進化であった。実は、その転換点自体を「エンポリオ・アルマーニ」が示唆していたという、劇的な巡り合わせがあった。この体験が、後の揺るぎない確信と信念を方向づけた重要な出来事となったのである。

ある時、「エンポリオ・アルマーニ」のジャケットを購入した際、ノベルティ(無料販促品)として一冊の豪華なフォトブックを手に入れた。何気なく眺めていた、すべて英語で書かれたその洗練された紙面の中に、突如として「Yohji Yamamoto」の文字を発見した。確かな記憶では、それはジョルジオ・アルマーニ氏自身が、山本耀司氏に対して惜しみない敬意と賛辞を贈る、短いながらも重みのある文章であった。この事実は、当時の僕にとって、自分の選んでいたスタイル(アルマーニ)のその先に、さらなる深淵なモードの世界が存在することを教える、非常に刺激的な情報だった。時を同じくして、映画監督ヴィム・ヴェンダースのドキュメンタリー映画『都市とモードのビデオノート』が札幌で上映されていて、僕は劇場でその映像を注視した。この作品は、山本耀司氏がパリ・コレクションの準備を進める過程を追ったもので、そこで描かれる、既存の価値観に立ち向かう徹底した「反骨の美学」に強く惹かれた。既成概念を打ち破り、服を通して哲学を語るその姿は、僕の好奇心を強く刺激した。

一方はイタリア・モード界の帝王として、伝統とエレガンスを再構築した巨匠。一方は世界のモードに衝撃を与え続けたアヴァンギャルドの旗手。その両巨匠が、国の壁、スタイルの違いを超えて互いにリスペクトし合うという事実は、「ヨウジヤマモト」というブランドが単なる流行を超えた、普遍的で確固たる哲学を宿している証左だと、僕は確信した。この二人の偉大なデザイナーを結ぶ見えない糸こそ、僕が追うべき「服の真理」だと感じた。社会人として自分の給与で服を買うようになり、「衣服が僕自身をどう表現し、どう機能させるか」という意味を現実の生活の中で模索し続け、その探求心の帰結として、僕は「ヨウジヤマモト」の服にたどり着いた。黒を基調とし、既製服でありながら着る人に「余白」と「自由」を与えるそのスタイルは、僕にとって精神的バランスを保つ鎧となった。(2につづく)

(画像はAIによるイメージです)

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