院長のコラム

長嶋、降圧剤を飲むってよ(前編)

「医者の不養生」。健康を説く専門家が、自分自身の健康管理には無頓着であるという、古くからある皮肉な言葉である。
先日、ある医療系メディアの記事で、全国の医師を対象にしたアンケートの結果を知った。実に7割の医師が自分自身を「不養生」だと感じているというのだ。その理由の上位は、「運動不足」「仕事上のストレス」「健康診断を受けていない」「食習慣の乱れ」であった。患者には養生を熱心に説く立場にありながら、自身の健康には無関心であるというのは、医師としてあるまじき態度である。他人に厳しく自分に甘い人間と指摘されても、反論の余地はないだろう。

僕は、この言葉を聞くたびに亡き父のことを思い出す。
父は優秀な内視鏡医であったが、六十歳を目前にして胃がんで他界した。当時、彼の若すぎる死を惜しむ声が多数寄せられた。しかし、医師である息子としては、「なぜ自分の健康管理ができなかったのか!」という悲しさと同じくらいの怒りを覚えたものだ。父の教訓、そして医師としての自覚から、僕は自分の健康には人一倍留意してきたつもりである。

カロリーオーバーにならないよう、平日は基本的に一日一食を実践している。
運動は、週2回の1時間程度のスイミングに、日常的「ながら筋トレ」を導入して確保していた。仕事上のストレスは、ささやかな買い物による「物欲解消」で発散させていた。もちろん、内視鏡と血液検査も定期的に受けている。唯一の難点は、医師として恥ずべきことだが、飲酒のコントロールが難しいことであった。
長年の間、体重の増減はあったものの、頑張っても引っ込まない下腹部を除き、体型に大きな変化はなかった。しかし、その生活が一変したのは、2020年からのコロナ禍である。

パンデミックの影響で、当院の内視鏡検査件数は激減した。
患者が来院しないからといって、こちらから呼び込み営業や飛び込み営業をするわけにはいかない。来る当てのない患者を待って悶々とするのは、精神衛生上良くない。そこで、予約診察が終了すると診療時間を切り上げ、余暇をプールで発散することにした。
週2回だったプール通いが、週4回、時には週5回へと激増した。運動量が過度になったことを理由に、僕は「摂取量と消費量がトントンならカロリーゼロだろう(個人的見解)」と都合よく解釈し、長年続けた一日一食生活を、プールに行った日に限り一日二食へと改めた。肉体疲労の後のビールは格別で、それだけでは終わらず、締めのウィスキーまで晩酌量まで増えた。日中は全身の皮膚を塩素消毒、夜は内臓をアルコール消毒と、健康なのか不健康なのかジレンマに陥った。

それがいつの頃からか、長年着ていたTシャツが「妙にきつい」と感じるようになった。「綿だから縮んだのだろう」と自己暗示をかけたが、やがてネックレスがチョーカーのように感じられ、腕時計の付け心地にも余裕がなくなってきた。
ある日、何気なく体重計に乗ってみて驚愕した。体重が3kg以上も増加していたのだ。コロナ禍のわずか3年間で、気が付かないうちに太ってしまった。太ったというよりも、むしろ胸周りを中心に、体がひと回り大きくなってしまったというのが正直な表現である。「雄一、何してるんな?」と草葉の陰から父の声が聞こえてきそうだ。

この体型変化こそが、後に僕自身を襲う高血圧という異変の、最初の兆候であった。(中編につづく)

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