残クレという免罪符で「猛毒」を飼う――フェラーリ・ローマと日本のアマルフィ・雑賀崎

以前、院長コラムに投稿したものをnote用にまとめ直しました。
【「跳ね馬」への乗車券と、胃の疼き】
まさか、よもや、あろうことか。僕はいま、フェラーリ・ローマのステアリングを握っている。
誤解しないでほしいが、金が余っているわけでも、世間に自慢したいわけでも、ましてや選民意識に浸りたいわけでもない。そんな俗物的な感情は毛頭ないのだ。
あるのはただ、脳天を突き抜けるような美的衝動と、「この造形美を手元に置きたい」という本能のみ。そして、それを現実のものとするための最強の魔法、その名は「残価設定型クレジット」。略して「残クレ」を利用して、「フェラーリ」という禁断の果実に手を伸ばしてしまった。
地方の開業医といえど、数千万円のキャッシュをポンと出せるほど、蔵に小判が眠っているわけではない。そこで登場するのが、現代が生んだ究極の免罪符「残クレ」である。
車両本体価格の75%を3年後の下取り価格(※確定保証ではない)として据え置き、残りを分割で支払う。平たく言えば「未来の自分への借金の付け回し」だが、この魔法の呪文を唱えた瞬間、手の届かなかったはずの跳ね馬が、急にこちらの体温を感じる距離まで近づいてきた。
かつてRCサクセションは『雨上がりの夜空に』で「いつものようにキメて ぶっ飛ばそうぜ」と高らかに歌った。僕がキメてぶっ飛ばすためのチケットは、36回の分割払いで手に入れたものだ。「分不相応」な代物だが、それでもいいと思った。
毎月の支払額の通知を見るたびに、胃のあたりが少しキュッとなる。だが、その疼きこそが、僕がこの美しい「猛毒」を所有しているという、生々しい証左なのだ。
【現代の「トヨタ2000GT」、白い朝の邂逅】
2019年11月、初めてローマを見たとき、直感的に「現代版、トヨタ2000GTだ!」と奮い立った。エアロダイナミクスを考慮したこれ見よがしの開口部も、大げさなキャラクターラインもどこにもない。
「ミロのヴィーナス」を思わせるふくよかで豊潤なボディ。まるで人体の曲線美を表現したかのような生命感みなぎる優美なライン――これこそが、僕が求めていたクルマだった。
「名は体を表す」というが、これほど情緒的なネーミングはあるだろうか。イタリアの首都であり、ファッション、アート、建築の至宝。その街の名を冠し、フェデリコ・フェリーニ監督の映画『甘い生活(ラ・ドルチェ・ヴィータ)』から着想を得たという「ローマ」。
コンセプトは、「LA NUOVA DOLCE VITA(新しい甘い生活)」。古き良きローマの悦楽を現代に蘇らせ、新たな人生の楽しみ方を提案するグランドツアラーだ。2+2のシートレイアウトを持ち、日常使いさえ許容する懐の深さがある。
納車日は2021年、いみじくもクリスマスの朝。休診日の晴れた白い朝、クリニックの駐車場に積載車から降ろされる真っ白なローマは、まさに神々しかった。背後にそびえる紀州の深い山並みの緑を背景に、静寂を破って轟く乾いたエンジン音に、「これがフェラーリか」徹底的に圧倒されながら訳も分からず神妙な気持ちになったものだ。あれから4年以上が経過したけれど、ローマを愛する気持ちは今も変わらない。
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