ボロボロさ誰かのレザージャケット〜佐野元春デビュー45周年(中編)〜
「つまらない大人になりたくない」と叫んだ45年前の青年は、今や69歳になっても、まさにその言葉を体現している。外見、内面、そして音楽に対する真摯な取り組み。そのすべてが、時を超えてもなお、あの日のままだ。根本的な部分は何も変わっていない。
その揺るぎないスタンスこそが、多くの人々を長年にわたり惹きつけ、魅了してやまない理由だ。彼は常に、自分自身の信念を貫き、時代に流されることなく、自分らしい表現を続けている。その姿は、僕にとって常に大きな道標であり、人生の岐路に立ったときに進むべき方向を示してくれる羅針盤だ。
「佐野さんに負けられない」、そんな思いが、僕の心を突き動かしてきた。18歳、僕が医学部に入学した時、佐野さんはニューヨークに旅立っていた。まだ何者でもない医学生時代、佐野さんは間違いなく日本の音楽シーンを牽引するリーダーであり、オピニオンリーダーだった。当時、佐野元春を模したスタイルや音楽が一世風靡した。後に、「元春チルドレン」を公言する多くのミュージシャンやクリエイターが輩出されたが、僕もまた一介の臨床医として、多大なる影響を受けた一人だ。社会人になってからは、仕事、結婚、転勤、子育てと、生活は目まぐるしく変化していった。佐野さんに対する一時期の熱狂は失せたものの、それでも僕の傍には常に彼の新譜があり、勇気づけられていた。
開業時は、デビューするミュージシャンのような気分だった。自分が学んだこと、経験してきたこと、両親から受け継いだもの、自分の信念や哲学を全面に出す気概で開業日を迎えた。デビュー当初、必ずしも順風満帆だったとは言えない佐野さんの歩み同様、クリニックの経営も当初は苦戦を強いられた。試行錯誤しながらも、生存競争を生き抜く意識を持ち続けられたのは、佐野さんの存在があったからこそだと信じている。
「佐野さんに負けられない」、その思いは今も変わらない。僕が革ジャンに目覚めたのは、彼の楽曲『Rock & Roll Night』の一節、「ボロボロさ誰かのレザージャケット」を耳にした時だ。以来、僕にとって革ジャンは単なる衣類ではない。それは、「ツイードのジャケット」と同じく佐野元春を象徴する特別なアイテムになった。近頃、佐野さんが頻繁に着用していることもあり、その季節になるとレザーライダースを好んで使うようにしている。ちなみに、佐野さんのライダースは「junhashimoto」で、僕が愛用しているのは「ヨウジヤマモト」経由の「BACKLASH」だ。還暦を過ぎても、こんなふうに「推し活」に励んでいる僕は、世間からはどう映るだろうか。家族からは呆れられているが、そんなことはどうでもいい。佐野さんの音楽とスタイルが、僕の人生を豊かにしてくれる限り、僕はこれからも、彼の背中を追いかけ続けるだろう。