僕が佐野元春を聴き続ける理由。いざ、ライブへ!〜佐野元春デビュー45周年(後編)〜
16歳の夏、僕は佐野元春というアーティストに出会った。初めて聴いたアルバム『No Damage』に心を奪われた。それまでに聞いたことのない疾走感あふれるサウンドと、英単語を多用した歌詞に耳を疑った。ティーンエイジャーの夢や希望、そして時に挫折や孤独を描く世界観に、僕は深く共感した。
以来、佐野さんの音楽はいつも僕の人生に寄り添ってきた。彼の歌声は、僕自身の感情を呼び覚まし、生き様を再認識させてくれる。時折、僕が「うすのろ」な生活をしていると、彼の音楽がふと流れ、自分自身の原点に立ち返らせてくれる。何のために生きて、仕事をしているのかと自問自答する。佐野さんは、僕にとって単なるミュージシャンではない。人生の師であり、心の支えなのだ。
今年の夏、佐野さんのデビュー45周年を記念した全国ツアーが始まった。僕が足を運んだのは、7月13日、大阪府堺市にあるフェニーチェ堺だ。堺でのライブは今回が初めてのようで、このホールは、佐野さんのキャリアに新たな光を当ててくれるかのような素晴らしい空間だった。 開演前、佐野コールを意味する観客の熱い手拍子からライブは始まった。45年のキャリアがギュッと凝縮された完璧なセットリスト、Coyote Bandの緻密ながらも魂がこもった演奏、そして音楽と映像の鮮烈な融合。それに呼応するファンの熱狂は、開演前から終了後まで、僕たちを最高の高揚感で包み込んだ。長い年月を経てもなお、瑞々しい感性と力強いメッセージを放ち続ける佐野さんの姿に、僕はただただ感動した。
僕の佐野元春体験はまだ終わらない。11月には神戸のライブに参加する予定。さらに、来年には大阪城ホールでの追加公演も発表された。堺は夫婦で、神戸は家族で、そして城ホールは友人と行くつもりだ。
そして僕は今年、自叙伝を執筆することになった。それは、自分の生い立ちや経験、出会いと別れを改めて見つめ直す作業だ。振り返ると、僕の人生が「正しい」か「間違い」か、成功したのか大したことがなかったのか、自分自身ではよく分からない。波乱万丈な人生の傍には、浜田省吾、尾崎豊、そして佐野さんの音楽があった。彼らの生きる姿勢に僕自身の人生を重ね合わせ、度重なる困難にも彼らに勇気づけられ、鼓舞され、現在の僕がいる。
中でも佐野さんは、発表されたアルバムをすべて購入し、事あるごとにライブに足を運んだ。自叙伝には、彼らのことを「人生の羅針盤」と記した。佐野さんとの精神的な交流は、これからも連綿と続いていくことだろう。彼の音楽は、これからも僕の人生のメルクマールであり、力強いエネルギーであり続ける。この先もずっと、彼の音楽に耳を傾けながら、僕自身の人生を豊かにしていきたい。