二日酔いと、蘇ったあの頃の笑顔 〜川崎医科大学同窓会(最終)〜
昭和60年度に川崎医科大学に入学した僕たちは、あれから30数年の月日を重ね、還暦を目前に、あるいはすでに迎える年齢となった。医師として、一人の人間として、それぞれの道を歩んできた。振り返れば、あの頃の僕たちはまだ何者でもなく、「こいつ、本当に医者になれるのか?」なんて内心思っていたかもしれない(笑)。
久しぶりの同窓会で交わす会話は、近況報告だけでなく、子供や車の話など、昔の延長線上にあるような飾らないものばかり。会話こそがメインディッシュで、会費18,000円の豪華な料理は、その会話を彩るツマミのような存在だった。故郷の地酒を持参してくれた友人もいて、飲み放題と持ち込みの酒が混ざり、すっかり酩酊状態になった。何をどれだけ話したのか、正直ほとんど覚えていない。それでも、心から楽しかったという記憶だけは鮮明に残っている。
宴もたけなわの頃、何人かの友人から「テレビで見たぞ!」「紀州のドン・ファン事件で映ってたよな?」と声をかけられた。正直、ちょっと気恥ずかしい。事件そのものに僕が関わったわけではないが、単なる知人が巻き込まれたデリケートな話だ。ニュースの片隅に映っただけなのに、多くの人が見ていたことに驚かされた。「ドンファンってどんな人なんだ?」「犯人は結局誰なんだ?」と無邪気に聞かれても、口ごもってしまう。メディアの影響力の大きさを、改めて実感させられた瞬間だった。
あの頃、夢も希望もなく、親の勧めで医学部に進んだ者もいたかもしれない。だが、30数年を経て集まった同級生は、皆、地域医療を支えるかけがえのない存在となっている。当時は仲間意識に乏しかった僕も、多くの経験を積み、人間としての年輪を重ねてきた。お互いの成長に感慨を覚えるとともに、時の流れを実感する。僕たちを再び引き合わせてくれた、今回の同窓会を企画した学友には、心から感謝の意を伝えたい。
楽しかった2時間の宴会はあっという間に過ぎ、場所をホテルラウンジに移しての二次会へと突入した。泥酔状態だった僕は、そこで誰と何を話したのか、どのような振る舞いをしていたのか、全く覚えていない。ただ、翌日、M先生から「(長嶋君)すっごく楽しそうだったよね」とLINEメッセージが届き、ああ、きっと心底楽しんでいたんだなと、自分のことながらホッとした。
「これが最後になるかもしれない」と不退転の決意で臨んだ同窓会だったが、終わってみれば、残ったのはひどい二日酔いの頭痛と、楽しかった記憶の断片だけだ。まるで、過ぎ去った青春の残像を追いかけるような、素晴らしい一日だった。
いつかまた、同じ顔ぶれと再会できることを心から願って。その日が来るまで、ごきげんよう、さよーならまたいつか!