院長のコラム

29階への道のり、『プレイバックPart2』が脳内で鳴り響いた日:ウォルドーフ・アストリア大阪体験記(1)

昨年、芦屋の船上花火大会に招待いただいた芦屋在住のO先生からLINEが届いた。O先生は、僕が同業者として、そして趣味を愛する者として、心の底から敬愛する友人だ。その花火大会で同席したI先生夫妻とともに、一緒に食事をしませんかとの誘い。
日時は9月6日土曜日、場所は「ウォルドーフ・アストリア大阪」とのこと。O先生夫妻からお呼びがかかれば、どんな予定があろうと断るなどできるはずがない。彼らとの会食は、日常の喧騒から離れ、お互いの人生観や趣味を語り合うことのできる、僕にとって唯一無二の、かけがえのない時間なのである。メッセージを見た瞬間、「行かなきゃ」と感じ、妻に承諾を得ることなく話を進めた。

「ウォルドーフ・アストリア大阪」というホテル名は、以前から僕のアンテナに引っかかっていた。とある旅系YouTuberが、その開業を「2025年を代表する一大プロジェクトだ」と熱弁しているのを観たことがあったからだ。場所は大阪駅北側の再開発エリア「グラングリーン大阪」。2025年4月3日に満を持して開業したヒルトン・ホテルズ&リゾーツの最上級ラグジュアリーホテルだという。YouTubeではその豪華絢爛な内装や、きめ細やかなホスピタリティについて語られており、開業前から日本初上陸であることが大きな話題になっていたようだ。
食事だけで帰るのはもったいない、どうせならその雰囲気を全身で体験してみたいと思い、宿泊料を調べてみた。普段、僕が定宿にしている「リッツ・カールトン大阪」と比較しても、遜色ないどころかむしろ少し安い。ならばこの機会を逃す手はないと、迷うことなく宿泊予約も済ませた。

土曜日の午後の診療を終え、帰宅するや否や休むまもなく、愛車を大阪へと走らせた。阪神高速11号池田線梅田ランプからほど近い場所なのは事前に調べて分かっていたのだが、アップルカープレイに入力したMAPの案内が、どうしても最終地点のホテルへと誘導してくれないのだ。現在も再開発工事が進むエリアは、ホテルの正面玄関が目の前に見えているにもかかわらず、かつて線路が通っていた区域を跨ぐことができない。ナビ通りに運転しても、右往左往するばかりで、ホテルの周りを2、30分もさまよったのには辟易した。

どうにかこうにかホテル正面玄関前に横付けすることができたものの、初めてのホテルで勝手が分からない。どこに駐車場があるのか、それとも宿泊者であれば予約なしでもバレーサービス(車の入出庫サービス)を受けられるのだろうかと、不安げに車を降りようとしたその時、背後から横付けして来たポルシェ・タイカンに乗った家族が、僕の車と和歌山ナンバーを冷ややかな目で見下すのが分かった。その一瞬の視線には、「フン、田舎者が」とでも言いたげな侮蔑の色がにじみ出ていた。頭に血が上るのを感じ、思わず脳内で「馬鹿にしないでよ そっちのせいよ」という、山口百恵の楽曲「プレイバックpart2」の一節が木霊した。
仕事を終え、休憩するまもなく2時間の運転、そしてホテル到着前のあたふた。さらに極めつけは他の宿泊客からの冷たい視線。怒り心頭で車を降りた僕は、一階の瀟洒なエントランスからエレベーターに一直線、鉄面皮のまま無言で乗り込んだ。僕らが目指すロビーは29階だ。(2につづく)

長嶋雄一クリニックお問い合わせ

診療科目(内科・消化器科・胃腸科)
診察週

月・火

木・金
奇数週
(第1・3・5週)
8:00 ~ 16:00 8:00 ~ 16:00 8:00 ~ 15:00
偶数週
(第2・4週)
8:00 ~ 12:00
休診日︓第1・3・5週水曜日、第2・4週土曜日/ 祝・日曜日