院長のコラム

「しない後悔よりする後悔」:60手前の僕がCreepy Nutsのライブに挑んだわけ

THE FIRST TAKEから

そんな経緯から、ヒップホップは僕にとってニッチなジャンルに過ぎなかった。だからこそ、久しぶりに意識的に耳に入ってきたCreepy Nutsの楽曲は衝撃的だった。彼らの楽曲には、過去の日本のヒップホップが持っていた「熱」や「攻撃性」に加え、洗練された「知性」と、極めてパーソナルな「弱さ」が共存していた。これは、日本のヒップホップが辿ってきた「進化」であり、同時に表現としての「深化」だと感じ、心底感動した。
俄然、彼らのことが気になり出し、YouTubeで検索を始めた。すると、アーティストの一発撮りパフォーマンスで有名なチャンネル「THE FIRST TAKE」に、Creepy Nutsのパフォーマンス動画が多数アップされているではないか。彼らの圧倒的なスキル、特にR-指定のフリースタイルラップの即興性、頭の回転の速さに僕は心を動かされた。

そして、世界的に大ヒットした「Bling-Bang-Bang-Born」も彼らの楽曲であると知った時、僕はもう確信した。人生は残り少ない。時間は有限だ。この感動を、生の熱量で体験しなければ、きっと後悔するだろう。
「そうだ、Creepy Nutsに行こう!」そう決意し、タイミング良く届いたチケットぴあの抽選に応募した。届いたのはちょうど春先で、日時は9月13日土曜日の大阪城ホールだった。運良く4人分の席が確保できた。「Creepy Nutsに行くことになった」と身内や親しい友人に話すと、一様に驚かれた。その意味するところは二つ、一つは「よくチケットを取れたね」という感嘆、もう一つは「年甲斐もなく」という嘲笑。けれども、「しない後悔よりする後悔」、チケットを取ったという既成事実はすなわち退路を断つことだった。

ライブは、我々夫婦と長男と三男の家族4人で参加することにした。数多のライブに行った経験上、家族で参加する場合、アーティストのTシャツを全員で着た方が周囲への見栄えが良くなるし、気分も盛り上がる。参加前、黒の「Champion」と「Creepy Nuts」コラボTシャツを購入し、その日に臨んだ。
閉口したのはホテル選びだった。あいにく、9月13日から15日の敬老の日まで3連休。大阪万博は終盤に差し掛かって盛り上がっているようだし、後で聞いたところによると、その日ヤンマースタジアム長居で「ONE OK ROCK」のライブがあったようで、ホテルはどこも満室だった。苦心の末、通常よりも割高なヒルトン大阪を選択した。翌14日は、買い物と大阪帝国ホテルで開催された阪急百貨店の催事に参加することもあったので、その点でもヒルトン大阪は利便性が良かった。

9月13日当日は、京都で開催された日本消化器病学会の近畿支部例会に参加するため早朝から車を走らせ、その後は大阪のホテルに移動し、夕刻、長男とホテルで落ち合った。お揃いのTシャツに着替え、サルエルパンツを選択した僕は、「還暦前のクリニック院長」という仮面を一旦外し、一人の音楽ファン、あるいは一人の人間として、大阪城ホールへ向かった。
会場に近づくにつれて、溢れかえる若いファンたちの熱気に包まれていく。彼らの中には、僕の子どもたちと変わらない世代も多い。少数派ながら我々と同世代と思しき人たちもいる。彼らが何を求めてここに集まっているのか。それは、きっと僕が求めているものと同じだ。「生きるヒント」、「明日へのエネルギー」、そして何よりも、「自分だけではない」という連帯感。「これから一体何が起こるのだろう」、大きな期待とともに会場の扉をくぐった。(3につづく)

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