院長のコラム

梼原(ゆすはら)町で隈研吾

四国旅行二日目
十二月二十九日、旅行二日目の予定は高知から道後温泉を予定していた。車での予定時間は三時間半である。長男が愛媛出身の同級生に問い合わせたところ、道中にある梼原(ゆすはら)町を勧められた。梼原にはどうも、今を時めく建築家、あの新国立競技場を設計した隈研吾さんの建築物が集合しているそうだ。梼原を目指して、西鉄イン高知はりまや橋を九時過ぎに出発した。ホテルを出て駐車場に向かう途中、赤い欄干の小さな木造の橋があった。「まさか?」、そうだそれが観光名所の「はりまや橋」だった。正直なところ、街に埋もれそうな、いや埋もれている観光迷所という印象だった。

高知松山自動車道を走らせること約一時間半、先ず現れたのが雲の上のレストランとホテル、隣接する雲の上のギャラリーだった。その日は生憎、宿泊者が満杯でレストランは一般営業されていなかった。雲の上のギャラリーも、タイミングが悪かったのか作品の展示はなかった。今や国民的建築家、木のルーバー使いが特徴的な隈さんの建築物である。好きか嫌いか二つに一つと問われれば、自分は否だ。建築家に三棟の設計監理をお願いした経験上、どうしても木の経年変化と劣化が気になる。それは、ひいては維持管理費にもかかわってくるからだ。当クリニックは木造で、外観の一部に船材にも用いられるラワン材を使用している。直射日光、気温の寒暖差、風雨に曝され、開業以来二度の補修を余儀なくされている。新国立競技場は、木材をふんだんに使うことで温もりがあり和的と称されているようだが、今後の維持管理や三十年、五十年後のレガシーと考えれば僕は危惧している。雲の上のホテルも、外観の木材の経年変化が腑に落ちなかった。

長女がネットで調べた山奥のこじんまりしたお店で昼食を終え、次は梼原町立図書館である。こちらの図書館は、今回の旅行で最も見どころのある建築物だった。床、天井、柱、書庫、ありとあらゆるものに木材が使用されていた。圧巻は天井や柱から延びる無数の木材である。紋切り型の表現になってしまうが、くつろぎ、やすらぎ、心地よさ、癒やしを感じた。維持管理のためだろう、土足厳禁だった。けれども、この空間に身を委ねることが出来るなら無問題(モウマンタイ)である。加えて、この図書館には相当優秀な司書がいるに違いない。なぜなら、図書の選定と配置が何とも絶妙である。ジャンル別に配置されているため、思わず手にとって読みたいと思える図書が側に何冊も並んでいた。ゆっくり過ごしたかったが旅の道中である、後ろ髪ひかれる思いで図書館を後にした。隣接する福祉施設YURURIゆすはらは、年末のため営業されていないようで内部を見ることは出来なかった。我々は家族であり、もはや医療法人の理事長と理事の面々である。視察が叶わなかったのは残念だが、ネットで見る限り、我らの介護施設「ポータラカ」は決して見劣りしない、いやむしろ勝っているように感じ誇らしかった。

その後、山間の道を縫うように車を走らせ、四時過ぎに道後プリンスホテルに到着した。今回の宿泊先は妻に全面的に任せていたため、宿泊先の予備知識は全く無かった。「温泉地でなぜにホテル?」と案じていたが、取り越し苦労だった。部屋付きの露天風呂と二つの大浴場、クラブラウンジの利用、個室での家族水入らずの夕食、十二分に快適だった。おかげで、日曜劇場「グランメゾン東京」の最終回を睡魔に襲われ見過ごしてしまった。

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