ランドクルーザー300に感銘を受ける
2020年初春、僕はコラムに、ランボルギーニ・ウルスの後継機としてレクサスLXを注文したことを書いた。当時、コロナ禍による半導体と部品不足、ウクライナ戦争、サプライヤーに対するサイバー攻撃、地震災害など、車業界は納期遅延という未曾有の問題に直面していた。それまでなら発売早々に納車されるのが当たり前だったが、僕が注文したLXの納車は、発売から半年後のお盆明けになった。それでも、自他ともに認める運の良さだったと言える。
LXを注文した頃、兄弟車であるランドクルーザー300の納期は4年待ちと言われていた。『4年後と言っても、キャンセルも出るだろうから3年くらいだろう。レクサスLXから乗り換えるのに丁度いいかもしれない』。そう考えた僕は、その年の春にランクル300の契約も交わしたのだ。その後、夏には新規受注が停止され、その状況は現在も変わっていない。
「来年(2025年)、ランクル300に小変更が加えられます。小変更前のものなら年内に、変更後のものなら来春納車予定ですがどうされますか」。昨年末、ディーラーから連絡が届いた。車は間に合っていたから、改良後の方がいいに決まっている。『来年でお願いします』と即答した。ランボルギーニやフェラーリでさえ、受注から2年以内に納車されることが多い。それと比べれば、予定よりも早くなったとはいえ、国産車で納期に3年というのは異例だ。そして5月17日、変更後のランクル300が納車された。
乗り換えることになったレクサスRX500Hは、レクサスLXからの乗り換えだった。歴代のRXを乗り継いできて、デザイン、取り扱い、機動性すべてがうまく調和されているクルマがRXだ。そしてレクサスLXからRX、そしてLXの兄弟車であるランクル300へと。3車の中で車両代が最も安いにも関わらず、乗り込んだ瞬間ニンマリした。目線の高さ、始動時の重厚感、運転中の浮動感が何とも言えず、自分の求めていた最良の乗り味がそこにあったのだ。
最上級グレードのランクル300ZXに諸々の装備をつけても、兄弟車たるレクサスLXとは、4、500万円もの価格差がある。構造や足回りの強化、内外装の質感、販売店の雰囲気など、価格差は至極当然だと評論家たちは言う。
だが、レクサス開業以来20年、何かしらのレクサスを乗り継いできた僕が断言しよう。『ことLXにおいて、レクサスはボッタクリかもしれない』。目に見えないこだわり、感性に響く、ラグジュアリーなムード。そういった主観的、感覚的なものに、500万円もの差があるとは思えない。レクサスLXを購入できるお金があれば、僕ならランクル300とエルメスのバーキンを2個購入する。もちろん定価購入が大前提だが、それくらいランクル300は良かった。
逆に言えば、これはレクサスとトヨタブランドに、価格差以上の目に見える差別化がなされていない証拠だ。レクサスNXとトヨタ・ハリアー、レクサスLMとトヨタ・アルファードも同様だ。見た目とレクサスブランドにこだわりがなければ、ハリアーやアルファード・ベルファイアは、コストパフォーマンスの良いクルマだと思う。
以上の見解は、あくまでも運転免許証を取得して40年、レクサス開業以来の付き合い、RX450hを皮切りにSUV歴15年になる現在の僕の心境だ。今回の経験は、望外の車歴を歩んできた僕に、車選びにおける本当の価値とは何かを再認識させてくれた。逆に、ランクル300の兄弟車であるランクル250は割高だと感じたのも事実だ。