届けたい、しかし届かないこの思い……(完結編)
【傲慢という名の誠実】
ここまで綴ってきた僕の「不安」や「焦燥」の足跡を読み、あなたは一体どう感じただろうか。
10人中8人は、この必死すぎる姿に「なんと強引で、傲慢な男だ」と嫌気がさしたかもしれない。だが、もしそう感じながらも、何かの縁でこの「僕のホームグラウンド(ホームページ)」を訪ね続けてくれているのだとしたら、あなたもまた、僕と同じ「ハズレモン」の血を引く一人なのだと思う。
もし、あなたの指が支援ボタンの前で止まっているとしたら。
「面白そうだが、また後でいいか」「自分一人が加わったところで、何が変わるわけでもない」 ――その逡巡は、現代を賢明に生きる大人として、極めて「正しい」反応だ。溢れる情報の濁流の中で、僕たちは自分を守るために立ち回ることで精一杯なのだから。
しかし、あえて言わせてほしい。その「いつか」という先送りは、僕たちが最も恐れるべき「無関心」という名の断絶へと繋がっている。あなたが投じてくれるその一票は、僕の過去を肯定するだけでなく、あなた自身の内側に眠る「社会からはみ出した本音」を解き放つための、唯一の鍵になる。僕は、そう信じて疑わない。
【三千円の「片道切符」】
このプロジェクトのリターンに設定した3,000円という金額。
これを単なる「本一冊の値段」として捉えるなら、確かに安くはないだろう。だが、僕があなたに求めているのは、そんな味気ない商取引ではない。
この3,000円は、僕という一人のハズレモンが、孤独な闇の中で血を吐くようにして書き上げた10万文字の目撃者になるための、「連帯の証」なのだ。本一冊の対価ではない。僕と共に、常識の外側を生きるための「片道切符」だと思ってほしい。
僕は、2,200人の傍観者が欲しいわけではない。
共に泥を啜り、共に黒い服を纏い、既成概念という名の厚い壁に風穴を開ける「共犯者」が欲しいのだ。あなたがボタンを押した瞬間、大げさかもしれないが、このクラウドファンディングは「僕の挑戦」から「僕たちの確信」へと姿を変える。霧の中に消えていた2,000人の気配が、実体を持った熱い鼓動となって僕に伝わる。その瞬間を、僕は今か今かと待ち構えている。
【叛逆の扉の前で】
「焦らず、慌てず、急がず」
そう自分に言い聞かせながらも、僕は「あなた」の名前が支援者一覧に刻まれるのを、一人の表現者として、そして一人の人間として、剥き出しの心で渇望している。
準備はすべて整った。あとは、あなたがその一歩を踏み出すだけだ。 僕と一緒に、この「常識という名の静かな海」をひっくり返そうではないか。 和歌山の診察室のドアは、いつでも開いている。
そして、この『ハズレモン』という叛逆の扉が、あなたのノックを待っている。
【SOMEDAY、正解のない地図を。そしていつか、家路へ。】
……昨夜、自分が書き殴った言葉を読み返し、その尊大さに自分でも顔が赤くなった。 還暦を前にして、なぜ自分はこんなにも無防備な姿を晒しているのか――、深夜の独房で自問自答する。父が逝った年齢を迎え、僕は今、正解のない地図を広げている。何が一体、僕を急き立てるのだろうか。クラファンで目標金額を達成して、一体何が残るのだろう。
だが、今の僕に、格好をつけている余裕など1ミリも残っていない。 走り出した以上、選んだ以上、「なぜ僕は走っているのだろう?」なんて思うことは愚の骨頂だ。それほどまでに、僕は切実なのだ。今回のクラファンは、僕の勝利宣言がゴールではない。伴走者としての『あなた』の存在が、僕には今どうしても必要なのだ。ただ、あなた一人の孤独に届けばいい。かつて、僕が佐野(元春)さんや浜田(省吾)さんにしてもらったように。
彼らに出会ってから40数年。片田舎の一介の医師が、なんちゃって表現者に変わった時、自分が救われた体験を、今度は自分が誰かにバトンを手渡すのだという気概。
…さあ、夜が明ける。僕はまた、書斎という名の独房に戻る。
扉を叩くのは、あなたです。(完)






