院長のコラム

巨星の死と慟哭のドレス:山本耀司とジョルジオ・アルマーニ(2)

(AIによるイメージ画像)

ジョルジオ・アルマーニ氏のブランドとは距離を置くようになったものの、かつて袖を通した「モード界の帝王」ジョルジオ・アルマーニ氏の動向は、常に僕の気になるところだった。
今年になり、同氏の体調不良が報じられ、6月のミラノファッションウィークでは「エンポリオ・アルマーニ」のショー直前、本人の不在が伝えられたことは、世界に動揺を与えた。海外メディアでは、9月のミラノファッションウィークでの復帰が報じられていたにもかかわらず、その期待は叶わなかった。アルマーニ氏は9月4日に自宅で死去したと同氏が率いていた企業グループが翌日発表。享年91歳であった。
ファッションの歴史に偉大な功績を残し、常にエレガンスと機能性の融合を追求した巨星の死に、ファッション界は深い悲しみに包まれた。一時期、そのブランドの衣服に身を包んでいた者として、僕自身も深い感慨を覚えた。

僕の記憶において、アルマーニ氏の最も重要な功績は、アンコンストラクテッド・ジャケット、いわゆる「アンコン・ジャケット」をモード、特に現代のビジネス・フォーマルへと浸透させたことだ。服飾における「アンコンストラクテッド」とは、構築的ではないという意味で、具体的には重い芯地や裏地、厚い肩パッドなどを極限まで排した、身体に柔らかく沿う仕立てのことを指す。
初めてそのジャケットに袖を通した時の感覚は、今でも鮮明に覚えている。それは、従来の衣服が身体に強いる不自然な緊張からの解放であり、「服」によって「身体」の動きが制限されない、「軽やかさ」だった。服飾におけるエレガンスと機能性の融合は、当時の僕にとっては衝撃的だったのだ。

そして、10月3日夜(現地時間)。2026春夏パリコレクションで、「ヨウジヤマモト」のファッションショーが開催された。「アヴァンギャルドの旗手」も御年82歳の円熟の境地である。今回のコレクションもいつも通り精力的だった。毛筆で書かれた書を大胆にあしらった黒のドレス群と終盤の軽やかな真っ赤な羽織。織地から糸をほどいてフリンジにしたセットアップやテキスタイルを捻ったり編み込んだりしたドレス群は、オートクチュールと見紛うくらい手が込んでいた。
ショーの中盤、サプライズが用意されていた。ジョルジオ・アルマーニ氏を追悼する2体のドレスが登場したのだ。2体ともバックには、かつてのアルマーニのキャンペーンヴィジュアルがプリントされ、1体はヨウジさんの思いを6文字の書に託し、もう1体にはアルマーニ氏から耀司さんへのショーの招待状がフロントにプリントされていた。

30年以上前、「エンポリオ・アルマーニ」から「ヨウジヤマモト」にスイッチし、「服を着ること」に対してスイッチが入った僕にとって、今回のピースは胸が熱くなった。巨匠ジョルジオ・アルマーニ氏を追悼し才能を称えるメッセージは無数にあれど、言葉ではなくドレスに思いを込めた耀司さんのアルマーニ氏に対する敬意と亡くなったことへの慟哭に、僕は意気と粋を感じ取った。
そして、「エレガンスを追求し続けた巨匠同士の、最初で最後のコラボドレスは、果たして商品になるのだろうか?」と、下衆ながら勘ぐった。(最終につづく)

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