院長のコラム

大阪城ホールへの助走―神戸という隠れ家で:佐野元春デビュー45周年アニバーサリーツアー(5)

 

【祝祭のアンコールへの約束】
昨年7月から12月まで駆け抜けた、佐野元春45周年アニバーサリーツアー。全国27公演に及ぶ熱狂のなか、僕たち夫婦は「フェニーチェ堺」、そして「神戸国際会館」という二つの夜を共に過ごした。
ツアーの余韻がまだ喉の奥に残る神戸公演の直前、とびきり眩しい報せが届いた。東京・大阪での追加公演の決定。大阪は2026年3月15日、舞台はあの「大阪城ホール」だ。大規模な祝祭を締めくくるにふさわしい聖地。迷う理由などない。僕はすぐさまファンクラブのサイトを開き、未来への約束――チケットを4枚確保した。

【四字熟語という「鍵」】
初夜は夫婦で、二夜目は家族四人で。そして三夜目となる今回は、高校の後輩である友人夫婦を誘うことにした。以前、ライブの報告をした際の彼の羨望に満ちた眼差しが忘れられず、追加公演の予約を伝えると、彼は二つ返事で「行きたいです!」と応じた。
彼は決して熱烈なファンというわけではない。だが、我々世代にとって「佐野元春」という四字熟語は、青春の扉を開けるための共通の鍵だ。感化されたか否かなど問題ではない。その名前と、『アンジェリーナ』『SOMEDAY』という曲名を聞くだけで胸の奥の何かが疼く。それが、あの時代を生き抜いた者の本能なのだ。

【神戸という「隠れ家」への戦略的移動】
実を言えば、昨年末から3月上旬まで、我が家は「孫」という名の小さな嵐と暮らしていた。この賑やかな後日談は、いずれまた別の「独房(note)」で語ることにしよう。
彼らが次にお世話になる義息の実家(神戸)へ、大量の育児物資を転送しなければならない。ライブ前日の14日土曜日に、僕は愛車レクサスGXの広大な荷室を、孫の物品で埋め尽くした。前日に神戸入りするのは、単に移動の疲弊を避けるためだけではない。友人との再会、そして「ヨウジヤマモト」に取り置いていた戦闘服(新作)の回収。還暦を前にした地方(痴呆?)医師にとって、それは極めて理にかなった戦略的移動であった。

【泡の中の沈没、そして朝へ】
3月14日は、土曜日の通常診療終了後、神戸に向かって車を走らせ、夕刻、義父母の家に孫の荷物を搬入。しばし歓談の後、任務を終えホテルオークラ神戸へチェックインし、その足で友人が予約してくれたイタリアンへ向かった。
友人とは、かつて田辺の呉服店で店長を務めていた男性。着物文化の縮小という厳しい時代の奔流のなか、彼はその審美眼を認められ、今は神戸で社長の右腕として全国を飛び回っている。
久々の再会に、会話は尽きない。だが、彼が気を利かせて選んでくれた「飲み放題」というメニューが、今夜の大誤算だった。スパークリングワインの軽やかな喉越しに誘われ、近況報告という最高のご馳走を肴に、僕は幾度もグラスを重ねてしまった。
結果は、言わずもがな。翌朝に備えて用意していた水着を纏ってプールへ行く余裕など一ミリもなく、僕は二日酔いという名の重い手荷物を抱えたまま、城ホールへの朝を迎えることとなったのである。
(6につづく)

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